日常の断片

無駄から生まれる幸せ

 あれは11月のこと。

「GAPに行きたい」パートナーからそう言われた。
 そこで「なんで? 何が欲しいの? どんな商品?」と訊ねていたら、きっと出かけることはなかっただろう。

 「わかった」とだけ答え、新潟市内のどこにGAP店舗があるか調べた。新潟市中央区のラブラ万代という商業施設内に1店舗だけだった。

 出かける支度をして、車で出発した。駐車場から目的地まではのんびり歩いた。
 「小春日和とはこういう日のことです、360度小春日和です」とでもいいたいくらいの気候で、歩いていて心地よかった。

 ラブラ万代に入ってからようやく訊いてみた。
「何を探しにきたの?」
「MARVELの手袋」
 メンズとレディースのコーナーどちらも見て回った。
 まったく見つからなかった。

 そこで、「GAP マーベル 手袋」でぐぐってみた。スパイダーマンのミトンの手袋が表示された。検索で出た商品画像を見せてみた。
「そう、これこれ」
 確かに、欲しくなるのがわかるほど可愛いデザインだった。しかし気づいた。
「これ『KIDS』だって」
「KIDS!」
 そりゃ探してもないわけだ。
 顔を見合わせて笑った。

 身に着けられはしないが念のため、キッズコーナーも見た。やっぱりなかった。

 後日もうちょっとちゃんと確認したら、スパイダーマンの手袋はちゃんと店舗在庫が検索できる仕様であった。
 家に出ずとも、キッズ用品だということも、新潟県内の店舗にはないということも確認できたはずだ。完全な無駄足、だ。

 ラブラ万代内に入っている紀伊国屋書店に寄った。
 ヒグチユウコさんの「ギュスターヴくん」の絵本の新作が出ていたことを知った。
 店内をふらふらしていると、以前別の本屋で見かけた「ひみつの本棚シリーズ」を発見した。
 魔術や神秘、おまじない…といった心をくすぐる内容が、美しい装丁で、鞄に入れやすいサイズの本に収められている。
 これ気になってたんだよね、うん買っちゃお!
 勢いに乗って「夢幻の動物事典~魔法の生きものか、それとも悪魔か~」も合わせて購入した。

 お昼に、新潟名物“バスセンターのカレー”こと万代そばのカレーを食べた。
 これこれこの味。何度も食べたくなる。すごく辛いというわけでないのに、食べていると身体がほっかほっかしてくる。
「おいしいね」
 お互い何度も食べている味だけど、そう言い合った。

「どこか行きたいとこある?」
と訊かれ、なんとなく歩きたい気分だったし、そういえば紅葉も見頃かと思って上堰潟公園と答えた。
 新潟の白鳥の飛来地、といえばまず瓢湖(阿賀野市)。そして佐潟(新潟市西区)というイメージだったが、上堰潟公園に行ってみたら白鳥がわんさか休んでいた。何百羽いたのだろう。

 クゥ、コクゥ、と美しく通る声が響き渡る。時々グワッと愛らしいカモの声も挟まる。

 瓢湖や鳥屋野潟で見たときよりも、白鳥が近かった。羽を動かす様子もはっきり見えた。
 それに思った通り、木々が色づき始めていてこちらも綺麗だった。

 またこの季節に訪れたいスポットが発見できた。

 無駄足から始まった休日。とても満ち足りた気分だった。

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